助産師さんが綴る連載コラム『むすびめ』 #2 「寄り添う」ということ
#2 「寄り添う」ということ
musubi助産院 助産師 塩見直美
“自分が大切にされている”という実感を持って暮らしている人が、この世の中にどれだけいるのでしょうか。
私が助産院で大切にしていることは、母親自身が「大切にされている」と実感できることです。
それは、母が大切にされていれば、色々な苦悩があっても子育てはうまくいきやすいと感じているからです。
これは私自身の経験に基づいています。
私は助産師であり、3人の子を持つ母でもあります。
助産師ではありますが子育てにおいては自信をもって向き合えているわけではありません。
日々、子供たちとの関わりを振り返っては反省し、“頭ではわかっているのに…”と自己嫌悪の連続です。
仕事を優先しなければならない時もあり、家族の時間をできるだけ大切にしたいという想いから、「自分」の優先順位はどんどん下がり、気が付けばいつも自分のことは後回し。
母とはそんなものなのかもしれませんが、“そんなもの”で済ませてしまって良いのでしょうか。
母親が自尊感情を育みながら子育てをし、家庭を支えていければ、悩める母達の心がどれほど豊かになることでしょうか。
助産院は母親としての第一歩を支えています。
大変なお産を乗り越え、休む暇もなく子育てがやってくる。
右も左もわからず戸惑う母達に、「いつでもなんでも聞いてね」と言葉をかけます。
それは、ただ疑問を解消し知識や技術を習得するためではなく、“あなたはいつも守られている”“私たちがあなたのそばにいるよ”“母としてのあなたを大切に想っています”という寄り添いの姿勢をお伝えする言葉。
赤ちゃんを守る側の母も、実は守られるべき人なのです。
助産院での日々の中で、色々な育児技術や知識よりもまず、人に守られている安心感で心を満たして帰っていただきたいのです。
育児の技術や知識は赤ちゃんとの日々の積み重ねで自然と身についてきます。
それよりも、自分にはいつでも帰れる場所がある、困ったことがあればいつでも助けてくれる人がいる、私は守られてよい存在なのだと感じられることで、母自身の力をエンパワメントし母としての第一歩を力強く踏み出していただけたらと考えています。
私自身もそうですが、母というものはすべてにおいて子供を最優先にするあまり、“この方法であっているかな”“何か間違えていたのではないか”と自己嫌悪の連続で自分を見失う時があります。
不安と迷い、わからないことだらけの子育てに日々向き合う母は、たとえ十分に大切に守られていても、そのことに気づく余裕すらないのです。
誰かがちゃんと自分を見ていてくれる、頑張っている自分を知ってくれていると感じ、母の自己肯定感を満たす。ただそれだけで、人は少し強くなれるのではないでしょうか。
「大変」だけが強調される子育てですが、実際本当に大変です。
でも、周囲の誰かがほんの少し母の状況や心を理解しようとし、寄り添うことができたなら、その時母の心には「大変」だけの育児のなかに、ささやかでかけがえのない「幸せ」に気づく余裕が生まれるのではないでしょうか。
そしてその心の余裕が、冒頭で申し上げた通り育児がうまくいくコツかもしれません。
みなさんは、「自分は大切にされている」と感じて暮らせていますか?
アドバンス認定助産師 塩見 直美(しおみ なおみ)
2017年7月 長岡京市に出張専門のmusubi助産院を開院。
2020年4月 向日市に入院できる有床助産院として新規開院。(乙訓地域で初めての分娩取り扱い助産院)
私は「向日市」で生まれ育ちました。
現在、3児(男男女)の母親です。助産師という仕事をしていてもやはり自分の子育てでは毎日が精一杯で、悩み反省し、また同じ日々を繰り返しています。
少しずつ少しずつ元気に成長していく子供たちの姿に、ただただ心から “ありがとう” です。
同じように今まさに妊娠・出産・子育て真っ最中のお母さんたちと一緒に悩み笑いながら、ともに歩んでいけるといいなと思います。皆様の身近な存在でいられますように…。
~ 助産師とは? ~
正看護師の免許を取得した後に、さらに助産師の国家資格を取得します(進学の方法には専門学校や4年制大学などいろいろなコースがあります)。
法律では「厚生労働大臣の免許を受けて、助産または妊婦、じょく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子」と定義されています。
つまり、妊娠期から出産・育児をするときの支援や健康に関する教育や相談を行う専門家なのです。
また、出産時期だけではなく、幼児から思春期にかけての性教育や更年期の健康教育、育児や家族支援など、とくに女性と深い関係を持った職業です。
英語では“Midwife”といい、「女性とともに」という意味になります。
この言葉のように、「女性とともに」ある私たち助産師を活用していただきたいと思うと同時に、私自身が皆さんに“My Midwife”と言っていただけるような助産師として、お役に立てることができれば嬉しく思います。
musubi助産院ウェブサイト;https://musubi-maternity.com/
musubi助産院インスタグラム;https://www.instagram.com/musubi_shiomi_naomi/
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